something more precious

09


「もしかしてリョーマは神の神子なのか?」
その場にいる全員がリョーマに注目している時にぽつりと言葉を発した人物がいた、イヌイである。
「えっ?!イヌイ!!どーいうこと?!?!」
イヌイの言葉にすぐ反応したのはエイジだった。
「それって伝説の?」
「ああ、フジなら知ってるだろ?満月の時だけ髪は金に、瞳は青に変り、その間、その人物は神に乗っ取られるという
伝説を。」
「うん。前に読んだ本に書いてあったよ。あと、2人共が覚醒しているときにキスをすると相手に願いが1つ叶い、その
人と結婚しないといけないとも書いてなかったっけ?」
「ああ、書いてあった。」
「ふはははははははは!!!!!」
シュウスケとイヌイが伝説について話していると突然笑い声がした。
「アトベ・・・・。」
シュウスケが笑い声がした方を向くと、テヅカと距離を置いたアトベがいた。
「ははは!!まさかリョーマが神の神子だったとはな。それにいいことも聞いた。リョーマとキスしちまえばリョーマは
俺のものになるわけだ。」
アトベはそう言い、リョーマの前へと踊り出た。
そして、キスしようとした瞬間に何かの力により、後方へと吹き飛ばされた。
「「「「「「なっ?!!!?!?!」」」」」
「「「「「「王子?!?!?!?!」」」」」
ヒョウテイ国の者たちはアトベに駆け寄り、テヅカ達はリョーマを凝視した。
【私に気安く触るな。】
「「「「「「「「「「!!!!」」」」」」」」」」
リョーマから聞こえてきた声はリョーマの声とは少し違う気がした。
「リョーちゃん??」
「おちび??」
その声を不思議に思い、シュウスケとエイジがリョーマに声をかけた。
【リマなら私の中にいる。】
「リマ?」
テヅカが聞きなれない名前を耳にしたので聞き返した。
【リマはお前たちが『リョーマ』と呼んでいるこの身体の持ち主だ。リマとはリョーマの本当の名前だ。】
「姫の本当の名前・・・。」
テヅカは自分の中でリョーマの本当の名前を知ることができたことに喜びを感じていることに気が付いた。






ああ、そうか、俺は・・・・・・・・・・・・・・・。





「それで、あなたは誰なのですか?」
オオイシが聞いた。
【私はお前たちが『神』と呼んでいる者だ。】
「やはり。では、リョーマは神の神子で、あの伝説は本当なのですか?」
イヌイが気になっていたことを聞いた。
【ああ、そうだ。リマは神の神子と呼ばれる者だ。そしてお前が伝説と呼んでいるのも本当だ。】
「ふっ。伝説は本当だったか。」
さきほど吹き飛ばされたアトベが再びリョーマの方へと歩いてきた。
【お前はヒョウテイ国の王子ケイゴ・アトベだな。】
「なぜ俺の名前を知ってる?」
【私とリマは一心同体だからな。リマが知っていることは私も知っている。しかし、私が知っていることはリマは知らな
い。リマが知らないことも私は知っている。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・では、種明かしでもしようか。ヒョウ
テイ国の王子よ。】
「種明かしだと・・・。」
【そうだ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4年前のことをな。】









































「4年前といえばリョーちゃんのご両親であるエチゼン国の国王様と王妃様がお亡くなりになられた年だったよね。」
4年前という言葉にすぐ反応したのはシュウスケだった。
【そうだ。ナンジロウとリンコを殺したのはケイゴ・アトベ、お前だ。】
「「「「「「「「「「「「「「「「「っっなっ?!?!?!」」」」」」」」」」」」」」」
「何寝言言ってやがる。俺様だという証拠でもあんのかよ?」
【お前はナンジロウとリンコの元にリマを后に欲しいと言いに行ったそうじゃないか。】
「それ本当なの?アトベ。」
「・・・・・・・・。」
シュウスケの言葉にアトベは無言で返した。
【そして断られた。リマは同じ気持ちなのかと聞かれた、答えは当然否のはずだ。リマにはもう好きな相手がいたか
らな。なのにお前は、はいと答えた。その後2人がリマに聞くとリマはそんなの知らないと答えた。2人は嘘をついてま
でリマを手に入れようとしたお前に危機感を感じ、お前を城へ入れないように命じた。違うか?】
「ああそうさ!!あの2人は俺をリョーマに会わさないようにしたのさ!!俺はリョーマに会いたくても会えなくなっ
た!!会えなくなればなるほどリョーマが欲しくて欲しくてたまらなくなった!!だからあの2人がいなくなれば俺はリ
ョーマに会えるしリョーマが手にはいると思ったんだ!!!!!」
アトベが叫び終わるとその場はシンとなった。
「・・・・・・・・そんな、そんな理由で父様と母様を・・・・・・・・・・・・・・・。」
その沈黙を破ったのは今まで神に乗っ取られていたリョーマだった。今は満月だが、神を押さえ込み、リョーマが出て
きていた。
「許さないっっっ!!!!!」
下を向いていたリョーマがばっと顔を上げ、目に涙をいっぱいためてアトベに襲い掛かった。
そのままリョーマはアトベを床へと押し倒し、胸倉をつかんで叫んだ。
「父様と母様を返してよっ!!返してっ!!そんな、そんな理由で父様と母様が死んだなんて・・・!!!」
「リョーちゃん!!やめて!!」
アトベの胸倉をつかんで泣き叫ぶリョーマをシュウスケが後ろから羽交い絞めにしてアトベから離した。
「離して!!離してよっ、シュウスケ!!!この男絶対許さないっ!!」
「落ち着いて!」
「嫌っ!!!」
「おちびっ!!そんなことしたっておちびの両親は喜ばないよっ!!」
「っ!!!!!」
エイジの一言にリョーマは暴れるのをやめ、そのまま崩れ落ちた。
「うっ・・・っ・・・・・・くっ・・・・・・。」
「リョーちゃん・・・・・・・・・。」
シュウスケはそっとリョーマに前に行き、抱きしめた。そして泣き叫んだ。
「ふぇ・・・・うわああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


悲痛な叫びが響いた。